環境にやさしい AI は実現可能か?AI の持続可能性に関する大きな疑問に Fastly の共同創業者が回答

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環境にやさしい AI は実現可能でしょうか、それとも AI 競争は持続可能性と根本的に対立構造にあるのでしょうか。この記事では、Fastly の共同創設者兼戦略イニシアチブ担当バイスプレジデントである Simon Wistow にインタビューし、AI の持続可能性に関するさまざまな難問をぶつけます。
また、米国、ヨーロッパ、アジア太平洋地域で AI インフラストラクチャと持続可能性に取り組む497人の専門家のインサイトを集めた最新の世界的調査「2025年 AI エネルギーパルスチェック」の数値も分析します。
残念ながら、AI のエネルギー使用量の追跡とワークロードの最適化に関しては、まだ長い道のりの途中です。ですが幸いなことに、AI をより持続可能にするためのツールはすでに揃っています。私たちがすべきは、それらのツールを活用することだけです。
質問1 : 生成 AI は本当に環境に悪いのでしょうか?
AI の持続可能性についてはオンラインで熱い議論が交わされていますが、一部のテックインフルエンサーは、AI は他の人が主張するほど環境に悪くないと述べています。Wistow は、こうした議論の極端な意見はあまり参考にならないと言います。
「どんな犠牲を払っても AI は将来的に必要だと考えている人もいれば、AI は災害だと考える人もいます。真実は、この中間にあります。」
AI のエネルギー問題に取り組むには、実際、AI が環境コストを伴うことを認める必要があります。生成 AI は、単に詩やコードを出力する魔法のクラウドというわけではありません。Wistow の言うとおり、何百万もの GPU がベクトルを処理し、膨大な電力を消費しています。ですがその消費量に気づいている人はほとんどいません。
彼の言葉は誇張でも何でもありません。Fastly が実施した2025年 AI エネルギーパルスチェックのデータによると、企業は AI によるエネルギー使用量を完全に追跡していないことが明らかになっています。実際、AI によるエネルギー使用量の 75% 以上を追跡している企業は10社に1社もありません。AI の使用量が拡大し続ける現状ではなおさら、追跡していないなど論外です。ちょっとした AI クエリでさえ、多大なエネルギーを消費します。Wistow 曰く、「よく言及される数字の1つは、ある種の大規模言語モデルに対するクエリが Google へのクエリの約10倍のエネルギーを消費する、ということです。そして Google はクエリごとに膨大な量の作業を行っています。」
幸いなことに、AI クエリをより持続可能にするツールがあります。そうしたツールの1つが、AI クエリのキャッシュを可能にする Fastly の AI Accelerator です。
「我々が洗練されるにつれて、自分にもできることがあると多くの人が気づき始めています。それは何かというと、一生懸命働くのではなく、よりスマートに働くことです」と Wistow は言います。
質問2 : AI 業界はどのようにしてイノベーションと持続可能性のバランスを取ることができるでしょうか?
イノベーションと持続可能性は相容れないものではありませんが、考え方を変える必要があると Wistow は言います。
「イノベーションと持続可能性のバランスをとる方法を考えることは、すなわち私たちのやり方を慎重に考え、物事について深く考えることだと思います」と Wistow は言います。「モデルが巨大である場合、トレーニングには多大なエネルギーが必要です。ですが、インターネット全体を使ってトレーニングするような数億ドル規模の巨大モデルが、あらゆるものに必要とされているわけではないでしょう。」
Wistow は、巨大で高価なモデルをデフォルトにするのではなく、よりスマートなエンジニアリングと効率的な再利用を提唱しています。
「エネルギー使用量はバランスをとることができるかもしれません。モデルを再利用して他のモデルをトレーニングすることもできます。」
日常のインフラストラクチャの最適化に関しては、特に AI のクエリキャッシュと共同作業によって大きな可能性が開けると Wistow は述べています。調査回答者の半数以上が、自社の AI クエリの 10~30% が冗長であると推定しています。さらに4分の1以上の人々が、最適化だけでエネルギー使用量を最大 50% 削減できると信じています。
「セマンティックキャッシュを使用することで、質問の言い回しが少し異なってもキャッシュできるため、[不要な] 作業を回避できます。仕事をしないことこそが、エネルギーを消費しない最善の方法です。」
さらに彼はこう続けます。「多くの人が、昨年私たちがリリースしたのと同じ種類のキャッシュ戦略を実装しています。[AI をより持続可能にするために] できることはあると認識する人が増えています。」
クエリキャッシュとワークロードの最適化は注目を集めていますが、まだ広く普及しているわけではありません。現在、キャッシュ、エッジ、またはワークロード最適化を広範囲に使用していると答えた回答者はヨーロッパが 14.7%、アジア太平洋地域が 27.3%、米国が 33.5% のみでした。回答者は、地域全体でエッジ AI を実装する際の最大の障壁として、エッジ AI の管理の複雑さを挙げました。
質問3 : AI をより環境にやさしくするにはどうすればよいでしょうか?
Wistow は、モデルのアーキテクチャからその下層のインフラストラクチャまで、多くのレイヤーで効率化をエンジニアリングできると述べています。
「大規模言語モデルをより効率的に実行するための研究に取り組むことは可能です。おそらく浮動小数点ではなく整数を基にしているため、エネルギー消費量は削減されるでしょう。」
彼はまた、一から作業をやり直す必要がないよう、企業や政府が参加できる共有モデルや標準化モデルのアイデアを提案しています。
「モデル間で作業を再利用することや、企業や政府、科学機関のコンソーシアムからの資金提供による標準的な共通モデルを持つことができるかもしれません。」
質問4 : 今後3~5年で持続可能な AI はどのように進化していくと思いますか?
Wistow は、明確な予測を示しています。
「直近では、モデルのトレーニングコストがあまりに行き過ぎのところまで来ているため、必然的にAI のトレーニング方法について人間がもう少し賢くならなければならないということがあります。」
つまり、規制上の義務がなくても、経済的な要因によって、よりスマートで無駄のないインフラストラクチャが間もなく必要とされるでしょう。
調査データもこれを裏付けています。世界中の回答者の約 45% が、AI の使用コストがエネルギー消費に関連している場合、エネルギー効率の高いモデルを優先すると述べています。一部の APAC および米国の企業は、エッジとクラウドのデプロイを選択するにあたってエネルギー使用量をインフラストラクチャの決定に考慮し始めています。
2025年 AI エネルギーパルスチェックレポート全文をお読みいただき、完全なデータをご確認ください。
調査データに関する免責事項
2025年 AI エネルギーパルスチェック調査から取得したインサイトは、議論の喚起を目的としており、業界ベンチマークの決定事項として機能するものではありません。調査は検証済みで、米国(315人)、ヨーロッパ(116人)、アジア太平洋(66人)のさまざまな専門家を対象として行われましたが、地域ごとのサンプルサイズは大きく異なります。自己申告データには、通常、ある程度の偏りや誇張が含まれる可能性があります。